出会い系サイトを紹介される

赤城啓子『今日は楽しい時間をありがとう。今度、あたしの働いている美容室においでね!可愛くしてあげるわよ☆』
坂本遼太『今日のオフ会楽しかったね!ところで真鈴ちゃんは今彼氏いるの??今度一緒に勉強しない??』
一度にこんなにたくさんメールを受け取ったことのない私は、嬉しい悲鳴を上げながら、丁寧に一通ずつ返信していき、その中で一番後回しにしていたのは、りょうたからのメールへの返信でした。
こんな時、どんな返事を書けばいいのかわからず「彼氏はいません。じゃあ今度図書館にでも行きましょう。おやすみなさい。」とあっさりとした返事をしました。
すると、もう深夜に近いのに、メールの返信がきました。
誰かと思えば、ぽっちゃりSNSで知り合ったケイコでした。
「返事ありがとう。夜中だからこんな質問するけど、真鈴ちゃん処女でしょ??」
私は、そのメールを見て自分の頬がカーっと熱くなっていくのがわかりました。
恥ずかしくて、どうしてそんなこと聞くのかわからなくて、私はとりあえず「はい。でも、それがどうかしたんですか??」と返事をしました。
すると、私を出会い系へと導く返信が、すぐに来ました。
ケ「やっぱり。男慣れしてないと思ったのよ(;・∀・) メールもそっけないし、今時の女の子は絵文字や顔文字くらい使えないとね☆このサイトで練習するといいよ。出会い系だけど、いろんな人が登録しているから、やり取りするの楽しいわよ!ここで人受けするメール術を勉強しなさいね!(笑)http…」
メールの最後には、どこかのサイトと思われるURLが載っていました。
そう、このURLこそが、私の人生の男性遍歴を華々しく飾ってくれる、出会い系サイト“ピュア・ラブ”のものでした。

オフ会の開始と、考察

全員メンバーが揃い、飲み物を注文すると、私はようやく一息付いて、ゆっくりと全員の顔を見渡しました。
私たちが座っていた座席はちょうど6人席で、3対3で座れるようになっている、掘りごたつ式の座席でした。
私は遅れてきたため、一番手前の端っこに座りました。
私の隣には、茶髪の若い男性、その奥にはロングヘアの女性、そして、私の向いにはちょっとオタクっぽい男の子、その隣に子犬のような可愛らしい男性、そしてその隣にはミートさんが座っていました。
私を入れて、女性は二人しかいなくて、あとは全員男性でした。
女性は、後に私に出会い系を紹介するケイコであることは容易に想像できましたが、あとはミートさん以外、誰が誰かさっぱりわかりませんでした。
しかし、ほぼ初めてこんなにたくさんの男性を前にしたもので、私は緊張か興奮かわかりませんが、心臓がドキドキしていたのを覚えています。
男性を雄と認識し、その相手を“セックスできるかどうか”を基準として選ぶような思考になるのは、出会い系での遊びっぷりが原因ですが、そのように出会い系でブイブイ言わせられるほどの自信、そして私を突き動かす果てしない性欲は、この頃から片鱗を見せ初めていたのかもしれません(自覚はしていませんが)。
男性を雄として扱うことができるのか、つまり相手からセックスアピールを感じ取れるか、その封印されていた本能は、私の中で少しずつですが解き放たれていったのでしょう。

りょうたとの出会い

飲み物が到着すると、とりあえず乾杯をして、そこでみんな改めて自己紹介をしました。
まず、幹事であるミートさんがジョッキを手に、立ち上がりました。
「えー、今日幹事を任せてもらいました、ミートこと富岡弘です。商社で営業やってます。歳は26歳、独身!ハンドルネームは、学生時代のあだ名のトミーを並べ替えただけです。」
ミートは、スラッと背の高い、中村獅童さん似のイケメンでした。
営業をやっているだけあって、彼の話し方には人を惹きつけるものがあるように感じました。
「どうも!りょうたこと、坂本遼太です!大学生って言ってたけど、実は浪人してます。今は20歳です!」
次に立ったのは、ミートさんの隣に座っていたりょうたでした。
りょうたは、人懐っこい笑顔が素敵な、キレイな目をした可愛らしい男性です。
この笑顔に悩殺された女性は、きっと数知れないことでしょう――そして、私もその笑顔にやられたのは、この時はまだ内緒です。
この後、彼とは出会い系をきっかけに、とんでもないことになるとは・・・あの時の自分を全力で止めたいです。
余談になりますが、それこそ、オフ会という名前があるけれど、出会い系で男性と会うのや、合コンを開催するのと、一体何が違うというのでしょう?
出会い系で会うのは悪くて、合コンやオフ会ならいいのでしょうか?
未だに私にはわかりません。
しかし、出会い方はどうあれ、少なくともりょうたとの出会いは、私にとってプラスにもマイナスにもなったのです。

メールがきました!

もっと話していたかったのですが、お開きの時間となり、携帯電話のアドレスを交換し、その日は解散となりました。
こうして連絡先を交換したことで、私はケイコから出会い系サイトを教えられることになるのですが(チャットだと人目があるので、出会い系が云々といった大胆な発言はあまりできないものです)、そんなこと私は知る由もなく、みんな交換していたので、それと同じように全員とアドレスを交換したのでした。
「またやろうね!」「今度はもっと長く時間取れるようにする!」などと、いろんなことを言い合いながら、みんな家路につきました。
私も家に帰り、部屋に入ってふと携帯電話を見ると、メールの受信がありました。
普段ほとんど携帯電話でメールなんかしない私は、メールマガジンか両親からのメールくらいしか受信したことがありません(あとは登録した覚えのない出会い系サイトや懸賞サイトなどの迷惑メールくらいです)。
そんな私にメールがきているなんて、なんだか初恋を知った少年のように胸がドキドキして、大慌てで携帯電話のメールボックスを開きました。
なんと今日会ったメンバー全員から、メールがきていたのです。
富岡弘『今日は来てくれてありがとう!楽しかったね!またオフ会企画するね。ではおやすみ(つ∀-)』
轟那智『お疲れ様★今日の飲み会は楽しかったね!次回はカラオケにでも行こうな!では!』
西山和弘『今日は楽しかったです。またみんなで遊びましょう。』
3人は一斉送信でしたが、残る2人、ケイコとりょうたからは、私宛てにきちんと作成されたメールがきていました。

じ、自己紹介をしましゅ。

最後は、私の番です。
みんなの視線が一気にこちらへ集中します。
おずおずと立ち上がり、小さな声で自己紹介をしました。
後に、出会い系で総勢30名以上もの男性と肉体関係を持つことになるビッチの片鱗を、全く感じさせない様子だったことでしょう。
「あ、あの・・・真鈴こと、下川鈴江です。えっと、18歳です。きょ、今日はこうやって、みんなに会えてよかったでしゅ。」
最後、噛んでしまいました。
それを聞いて、私の向かいに座って静かに烏龍茶を飲んでいたニッシーが、盛大にお茶を吹き出しました。
その瞬間、一斉にみんな爆笑し始めました。
「なんで“よかった”って既に過去形なんだよ!しかも噛んでるし!」
すかさずミートさんが私にツッコミを入れました。
「やべー!真鈴ちゃん面白すぎる!」
私の隣にいた那智が、笑いながら私の背中をバシバシと叩き、ニッシーは目に涙を浮かべつつ苦しそうにゲホゲホと咳き込んでいます。
それを見て、ほかの人もゲラゲラと笑い始め、その場は一気に和やかなムードになったのでした。
そうして、私の入学祝と銘打った飲み会は、すっかり打ち解けたメンバーで和気あいあいと進行し、私はとても楽しい時間を過ごしました。
今まで友達のいなかった私には、こんな風に誰かと語り合ったり笑い合ったりすることが初めてだったので、本当に心の底から彼らと会えてよかったと実感しました。
出会い系だろうがオフ会だろうがなんだろうが、人との出会いは素敵なものだと、私はその日身をもって知ったのでした。
まさかその後、よりによって自分が出会い系で人生を大きく左右されることになるなんて・・・人生何が起こるかわからないものです。

ケイコとの出会い

「こんばんは!俺は那智こと轟(とどろき)那智って言います!料理の専門学校に行ってます。将来の夢は自分の店を持つこと!19歳っす!」
那智は、少しウェーブのかかった茶髪に、両耳にピアスを開けており、まさに、今時の男の人でした。
少しタレ目で、笑うと見える八重歯がとても可愛らしく見えます。
「お初です。ニッシーこと、西山和弘です。この近くの高校の2年、今プログラマーを目指して勉強中です。」
ニッシーは、いかにもオタク、と言った風貌の男の子で、レンズの厚い黒縁眼鏡に、坊ちゃん刈りと呼ばれるであろう髪型から、彼がオタクであるということは容易に想像できました。
「初めまして!ケイコこと、赤城啓子です!美容師やってます。年齢は内緒!花の独身です☆よろしくね!」
ケイコの金に近い茶髪は腰に届くほど長く、そしてキレイに巻かれています。
しかし、ゴージャスな髪とは対照的に、メイクは薄めで、それでも彼女の目鼻立ちがはっきりしているので、さほど気になりません。
スタイルもよく、一般的に美人と呼ばれるタイプの人でした。
化粧がうまいとか髪型がすごいとか、そんなことなら誰にでもできるでしょうが、ケイコは自分自身の魅力を理解し、それを全面に押し出す方法を知っていたようです。
同性から見ても、人を惹きつけてやまないケイコですから、出会い系でもさぞかしモテたことでしょうが、彼女は出会い系での体験談を、私にはあまり話してくれませんでした。
後に、彼女は出会い系で失敗ばかり繰り返していたこと、そして素敵な彼氏ができたとたん(美容院の常連さんだったそうです)、すっぱりと出会い系を断ち切ったことなどをカミングアウトしてくれましたが。